その日の夜―――。


「なんか紗雪、嬉しそうじゃない?」


「そうかな?」


仕事から帰ってきたお姉ちゃんにそう言われたけど…… 松田さんと話したことをお姉ちゃんに話すことに少し恥ずかしさを感じて、内緒にした。


「なにかあったの?」


「ないない! いつもと変わらないって」


「ふーん、陽斗くんにでも会ったんだね」


あっ! 冷蔵庫に今日貰った缶コーヒーを閉まっておいたんだ!

冷蔵庫を開けていたお姉ちゃんに見たかった。


「陽斗くんねー」


「そのコーヒーあげるからっ!」


お姉ちゃんがコーヒーを眺めて、あたしをニヤニヤした目で見つめて来る。


「陽斗くんのことは大抵、教えてあげるからね」


「そんなの、興味ないから!」


“お風呂入ってくる”と最後に言って、あたしはお風呂に逃げ込んだ。

遠くからお姉ちゃんの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。