隣の部屋に二人で向かった。

あたしは部屋の鍵を持っているけど、松田さんは大きく深呼吸してから、インターホンを押した―――。


「はーい」


遠くからお姉ちゃんの声が聞こえる。

ガチャッとドアが開いた。


「あっ、紗雪ー。 おかえりー」


「ただいま、お姉ちゃん」


「陽斗くんもお帰り」


「どうも、紗雪ちゃんを送ってきました。 遅くなってすいません」


松田さんはそう言って、深くお姉ちゃんに頭を下げた。


「!!」


お姉ちゃんは松田さんが突然頭を下げるものだから驚いている。

そして、正気を取り戻し少し苦笑いを浮かべた。


「あのねー、まだ10時前でしょ? 日付が変わる前には帰してもらえたらいいから」


「そうですか? でも、美春先輩、心配になりませんか?」


「陽斗くんと一緒だって分かっているんだからいいわよ。 でも、日付が変わってから帰るようなら連絡もらえたらいいから」


あっ、お姉ちゃんってそうやって思っていたんだ。

…… 知らなかった。

松田さんと付き合うことは許してくれてはいたけど、本当はどう思っているのかは知らなかった。