部屋に着いたら、あたしはいつもの定位置―――。

テレビの前に座らされた。


「紗雪ちゃんはここで、テレビでも見ていてね」


「手伝いますよ?」


「文化祭で疲れたでしょ? まだ、明日もあるんだから少し休んでおきな」


こうやって言われたら、もう大人しくしているしかない。

テレビを見ると言っても、一人で居たら楽しくない。

キッチンにいる松田さんを盗み見るけど、あまりよく見えない。

あーあ、おもしろくない。


「紗雪ちゃん?」


「はーい」


「あれ、起きていた」


あたしが起きていたことに驚いたのか、ひょっこりキッチンから顔を覗かせた松田さんの目が大きく見開かれていた。


「疲れているんだから寝ていいんだよ?」


「そんなことできません」


「紗雪ちゃんの寝顔はかわいいから、みたかったなー」


“ハハハッ”と笑って、キッチンに松田さんは戻っていった。


絶対、松田さんの前ではもう寝ない。

寝顔なんて、もう見せない。

数回ほど、松田さんの前で寝てしまったことを今、ハンパなく後悔している。