初めてかもしれない。

松田さんが普段からそんなことを思っていたなんて、初めて聞いた。


「会いたくても、俺は不規則だしね。 紗雪ちゃんを夜遅くまで連れ回すのだってよくないし……」


「遅くても…… 隣通しじゃないですか」


隣通しなんだから、危ないことはない。

帰るとこは同じなんだから……。


「でも、美春先輩はどう? 帰りの遅い紗雪ちゃんを心配するよ?」


「ちゃんと連絡するので大丈夫だと思います」


「かもしれないけど。 でも、やっぱりそういうことはダメかな?」


松田さんはやっぱり大人だ。

あたしの安全だけじゃなくて、お姉ちゃんにまで気遣いをしてくれて…… 松田さんといると自分が本当に子供だって思ってしまう。


「紗雪ちゃん」


「はい」


「文化祭、楽しもうね」


そうだ。

今は文化祭に来ているんだ。

こんなウジウジした気持ちでいては、もったいない。


あたしはカバンから、パンフレットを出す。


「松田さん、見てみたいのとかありますか?」


「んー、紗雪ちゃんが勉強している校舎とか見てみたい」