きっと、さっき話していた商学部の先輩だろう。

午後からは一緒に回るって言っていたもんね。


「紗雪ちゃん―――」


頭上から松田さんの声が降ってきた。

その声に誘われるようにあたしは見上げる。


「当番、お疲れさま」


「ありがとうございます」


声だけでなく、松田さんの優しくて大きな手も降ってきた。


数分前まで、マシンガンの用に話す明日香がいたせいか急に二人きりになり、一気に静かになった。

文化祭と言うことで音はたくさん流れているけどあたしたちの間には静かな空気が流れている。

しかし、その空気が気まずいなんて思わない。

逆にこの空気の方が落ち着く―――。


「明日香ちゃんは午後どうするの?」


「先輩と回るみたいです」


「なら、一人じゃないから大丈夫だね」


「はい」


もしかして、松田さんは明日香が一人だったら一緒に回ってくれるつもりだったのかな?

でも松田さんだからな……。

絶対、そうやって考えていてくれだよね。


「紗雪ー!! 松田さーん!!」


電話の終わった明日香が戻ってきた。


「先輩が今、当番終わったからあたし行くね」