「前から気になっていた人なんだよね」


少し、照れながら明日香が言った。


「そっか」


明日香の照れる表情なんて初めて見た。

この表情が“恋している―――”って語っている。


「でも、うちらのサークル長って商学部だっけ?」


「違うよ、経済学部。 でも、経済学部と商学部って時々授業が被るじゃん? だから、先輩と仲が良かったみたい。 歳も一緒だしね。

前から何回か商学部の先輩と話しているのを見かけていたから、夏休み中に1回“商学部のあの先輩と仲良しなんですかー?”って聞いてみたの」


「それで、仲良しだってわかったわけね」


「そう。

今まで何回か合コンに参加してあの商学部の先輩に会えるかなーって思っていたけど全然ダメだったんだよね。 でも、こんなに近くに知り合いがいたなんて、灯台下暗しだったわー」


そっか、明日香がいつもあんなに合コンに参加していたのって、あの先輩に会うためだったんだ。

でも、商学部以外と合コンしていたよね?

それはどうして?


「もしかして、人数合わせ来るかもしれないじゃん!!」


納得いたしました。

あたしたちの大学は、総合大学だから学部や学科を超えての友だちができる。

明日香はそれを狙っていつも合コンに参加していたんだ。


明日香と話しながら歩いていたら、校門が見えてきた。

校門前に佇む長身――― 松田さんだ。