メイクポーチを取り出す。


「あれー、紗雪。 松田さんのとこにいかないの?」


急にメイクポーチを取り出したあたしの行動に疑問に思い、明日香は近づいてきた。


「少しだけ時間があるからメイクを直そうと思って……」


「あー、そういうことか」


あたしの様子に納得して、明日香は少し考える素振りをみせた。

そして、何かを思い付いたのか突然、明日香のまわりに花が咲き誇り――― 言った。


「紗雪、あたしの貸してあげる」


「ん? ありがとう」


何を貸してくれるんだろう?

でも、明日香が嬉しそうに飛び跳ねながら自分のカバンを漁り、やや大きいメイクポーチを持ってあたしの前の椅子に座った。


「はい、紗雪ー。 メイクしてあげるからねー」


「えぇ!?」


ちょっと待って!!

明日香がメイクをしてくれるの?

そりゃ、明日香にメイクしてもらえるのは嬉しいけど……。