「そんなこと気にしていたんだ」


「そんなこと?」


松田さんの言葉が引っかかる……。

松田さんとの出会いはこのコーヒだって勝手に思っていたけど。

コーヒーがあったから、あたしは松田さんと仲良くなれたと思っている。

交わす言葉はあの頃は少なかったけど……。


あの時から、コーヒーを渡してくれる松田さんに惹かれていたのに。


「松田さんにとってはそんな程度なんですね」


「そりゃあね……」


そっか、松田さんにとってはなんとも思わないものなんだ……。

そっか、そうなんだ。


「紗雪ちゃん?」


「……」


「何か勘違いしているみたいだから、一応、補足させて」


少し困ったように眉を下げ、あたしを見下ろす。


補足って?


「紗雪ちゃんは知っていると思うけど、俺が紗雪ちゃんにコーヒーを渡したのって“紗雪ちゃんと話せたらいいなー”って下心を丸出してコーヒー持って近づいたんだ。

だから、俺にとったらコーヒーはちょっとだけ恥ずかしい物なんだよ」


紗雪ちゃんは俺の下心に気がつかずにいつも優しくしてくれたよなーなんて、一人で思い出に浸り始めた。