この店長さん、後ろに目でもあるんじゃないかな?

今は松田さんに背を向けているのに、松田さんがどんな表情をしているのかわかっているんだもん。


「店長ー、どーしてガムがあって、コーヒー無いんですかー?」


「それは俺が、紗雪ちゃんに買ってあげたやつだから」


「甘いものにはコーヒーでしょ?」


そうだよね。

松田さんは甘もの…… ケーキやプリンなどを食べるときは、いつもコーヒーを飲んでいる。

でも今日は、店長さんがあたしのために買ってきてくれたので当然だけどコーヒーは入ってなかった。


クルリと椅子を回し、店長さんは呆れた顔をしてこっちを向いた。


「あのねー、陽斗。 俺はそれを“紗雪ちゃんのために”買ったわけ。 だから当たり前だけど、コーヒーは無い。 ガムがあっただけありがたいと思え!!」


「いいじゃないですか、俺の分もついでに買ってくれたって」


「嫌だよ。 陽斗はこんなに可愛い彼女を今まで隠していたんだから、そんなやつには優しくしない」