「あ、飲み物まで……」


「“コーヒーは苦手”なんだよね?」


「よく…… 知っていますね」


松田さんにもいまだ話していなのに…… この人の観察力は恐ろしい。


「これでも“接客業”なんでねー」


「…… いただきます」


あぁ、接客業ってすごいんだ。

あたしには絶対に無理だな。


袋の中から、プリンを取り出してあたしはそれを少しずつ食べる。

カチカチと店長さんの叩くキーの音が響く。


「紗雪ちゃん」


「…… 松田さん!」


お仕事が終わったのか、私服の松田さんが現れた。


あたしの横のイスを引き、そこに腰を下ろした。


「店長に買ってもらったの?」


「はい、買っていただきました」


松田さんは袋の中をゴソゴソとあさり、ガムを一つ見つけてそれを口に含んだ。

…… 仕事終わりだからかな?

テーブルに肩肘をついて、手のひらに顎を乗せて…… 少し眠そう。


「陽斗ー、眠いんなら早く帰れよー」