まっすぐ前を向いたまま、松田さんは何かを決意したように言う。


「俺さ、紗雪ちゃんが嫌がることしないから」


「はい」


「紗雪ちゃんが大学卒業するまで手は出さないから」


「…… はい」


「紗雪ちゃんと付き合うこと、本気だから……」


“本気”って……。

どういうことかな?


あたしと視線を合わせ、松田さんはゆっくり口を開く。


「紗雪ちゃんのこと、大切にするから」


「…… ありがとうございます」


きゅっと、その言葉に答えるように強く松田さんの手を握った。


松田さんの手から、たくさんの優しさを感じる。


ここまであたしを優しく包み込んでくれる人がいるだろうか?


「じゃっ、帰ろうか?」


「はい」


松田さんに少し引かれるように立ち上がった。