あたしからの“お願い”は、そんな難しいことではないと思う……。


「いいですか?」


難しくはないが、松田さんに関わる内容だから、少し下手に出ながら聞いてみる。


「聞ける範囲なら……」


いいかな、言っていいかな?

ワガママかも知れないけど、少しだけやりたいの。


「…… 手、繋ぎたい」


あたしから言い出したことなのに、松田さんに頼む時になったら声が小さくなってしまった。

松田さんに聞こえるか、聞こえないかの声だったのに、この静かな夜の公園だ。


「手、繋ぎたいの?」


ばっちり聞こえちたみたいだ。


「あの、嫌ならいいんです! 気にしないでください」


学校で見かける友達たちが彼氏と手をつないでいるとこや、街で買い物している時にみかける恋人同士が手をつないでいるのを“いいなー”って、いつも思っていた。

自分に彼氏ができて、その憧れが現実になろうとしている今。

つい、松田さんにお願いしてしまった。


クスッと少し笑ったと思ったら、松田さんが優しくあたしの手を包み込んだ。


「紗雪ちゃん」