松田さんと約束をして、しばらく二人で抱き合ったままで―――。

あたしの瞼は次第に重くなる。


今日、明日香とたくさんカラオケで歌ったからかな?

それとも、こんなに暑い中を歩き続けたからかな?

どっちでもいいや。

いま、この暖かな松田さんの腕の中にいられるなら―――。


「紗雪ちゃん?」


「…… はい」


「もしかして、眠い?」


「ううん、眠くない」


松田さんの腕の中で首を振る。


「嘘、眠いでしょ?」


「眠くない」


眠くない。

眠くないの。

松田さんにもう少し、こうやってぎゅってしてほしいの。


「紗雪ちゃんって眠くなると、かわいくなるね」


「んー!!」


ぎゅーっと強く抱きつく。


「このままでいるから、少し寝な?」


だから、眠くないの。

寝たくないの。

せっかく松田さんと会えたのに、寝るなんてもったいないことしたくない。


そうやって、思っているのに…… 松田さんが小さい子を寝かしつけるように背中を叩いてくれてあたしは夢の世界へ旅立った―――。