もういやー。

明日香がなにを聞きたがっているのか分かってしまうだけに…… 逃げ出したい。


「ほらほらー、早く座りなー」


「はぁー」


大きなため息を吐いて明日香の隣に座る。


「んで、付き合い出したの?」


直球だなー。


「つき合いだしたよ」


「へー、そうなんだー」


「うん」


ちびちびアイスティーを飲んで明日香からの視線を逃げる。

でも、明日香は逃がしてはくれない。


「ねぇー、松田さんって優しい?」


「優しいよ。 毎日メールか電話くれるし」


「デートは?」


「……」


松田さんは社会人。

それに仕事は不規則。

付き合い出してから、外で会う…… なんて、そんなことは一度も無い。

仕事だってわかっているから…… わかっているから。


「寂しいんだ?」


「さっ、寂しくなんか……」


寂しくなんか…… 寂しくなんか、無いんだから。

ちゃんとお仕事だって、わかっているもん。