だって、お兄ちゃんの松田さんがこんなにかっこいいんだもん。


「春、弟がこっちに来たら紗雪ちゃんを紹したいけど…… いい?」


「…… はい、お願いします」


来年の春が、一気に楽しみになった。


「じゃあ…… 俺はそろそろ行くね」


「はい……」


松田さんが立ち上がったので、あたしも立ち上がる。

松田さんの後ろを歩いて行き、靴を履く松田さんをポーッと見下ろす。


「紗雪ちゃん……」


「はい?」


「そんなに見ないで? 離れたくなくなる……」


そんな爆弾を落とさないでください。



「じゃあ、今日は突然ごめんね。 でも、嬉しかった」


「はい」


松田さんがなにを言っているのかわかるから…… 顔が赤くなる。


「おやすみ」


「おやすみなさい」


松田さんが奥の部屋を少し伺う素振りを見せて―――。


「――― !!」


松田さんの優しい気すがおでこにふってきた―――。


「おやすみ」


あたしが固まっている内に松田さんは玄関から出て行ってしまった。