松田さんに声を掛けられて、ビクッと大きく肩が揺れる。


「紗雪ちゃんさ、昨日、俺が言ったこと覚えている?」


「ん?」


わからなくて、首を傾げる。


昨日、松田さんが言ったこと?

なんか、たくさん言われたからどれを指しているのかわからない。


「うわぁぁぁ、まじかよーー!!」


松田さんが床に倒れ込んだ。


奥の方からお姉ちゃんが楽しそうに…… それはもう、楽しそうな声で松田さんを呼ぶ。


「だからー、前に教えておいてあげたしょー? “紗雪にはきちんと言葉で”ってさー。 それを守らなかった、陽斗君が悪いんだからねー」


いつ、お姉ちゃんと松田さんは二人でそんなことを話していたんだろう?

あたしの知らないとこで二人があたしのことを色々話していたなんて……。


「せっかく、色々教えてあげたのにー」


いまだ、松田さんは床に倒れ込んだままで、お姉ちゃんの声を聞いているのか聞いていないのか…… さっぱりわからない。

たぶん…… 聞いているとは思うけど。


「松田さん?」


「紗雪ちゃん、いまは俺。 …… 無理かも」


無理って…… 何が、無理なんだろう。