“ありがとうございます”と、ドアを閉める前にもう一度言って、あたしはドアを閉めた。


パタン――― と閉まったドアに背を預ける。


やった、またもらっちゃった。


松田さんからもらったコーヒーをギュッと握りしめる。


コーヒーなんて、一口も飲めないけど…… 松田さんからもらえると、嬉しくてしょうがない。


松田さんと会うのなんて、週に1回、2回…… 全く会わない週だってある。 でも、会えるその数回が嬉しくて、たまらない。


お姉ちゃんが出張で留守にしていたって、時々聞こえてくる隣から物音があるから、全然寂しくない――― とは言えないけど、少しだけ寂しさがまぎれる。


「夕ごはん、どうしようかな」


松田さんからもらったコーヒーは、お姉ちゃんにあげるとして…… あたしは自室に荷物を置いて、今日の夕ごはんを考えはじめた。