ディーノは剣の柄に指を這わせると「だろうな」と頷いた。


「だから困るんだよ、雑魚は食べたくないってうるさくて」


そう言うとディーノは剣の柄をギュッと握ると剣を一回転させ、ファルスの喉元に剣先を突き付けた。

差し込む太陽の光を反射するように、銀の刀身が光る。

その剣先に特に臆することもなくファルスは佇み、そっと人差し指を乗せた。

指先の皮がスッと切れ、そこから赤い鮮血が雫を作る。

雫が剣先を濡らした瞬間、高い金属音がその場に響き渡った。

まるで紙を破るかのような空気を引き裂く音にディーノは苦笑しつつ、剣先に舌を這わせた。


真っ赤な舌が同じく赤い雫を舐めとる。


艶めかしいその舌先に赤い雫は待っていたとばかりにそこへ引き寄せられていった。

ゴクリとディーノは雫を深く飲み込むとファルスを見遣った。

ファルスは無機質な表情のまま背筋を伸ばし、ディーノを見つめていた。


「相変わらず、おまえの血は甘いな。こういう上質な味を知ってしまうと雑魚じゃ不満になるだろうな。とはいえ、おまえをいつも切り刻むわけにはいかないからなぁ」


そう言ってディーノは艶やかな笑みをファルスに送ると、ファルスは「光栄です」と静かに頭を下げた。