「我が闇を穢した罪を拭うために」


青年の足が軽やかに屋根を蹴り、宙で2回転する。

鮮やかに白の円が宙で描かれ、銀色の光が残像を残すかのようにきらめく。


「一緒に『死の円舞曲(ワルツ)』を踊ろう」


まるで手を差し伸べるように、青年の剣がそれに突き刺さる。

踊るように地を滑る。


「う……ぐぐ……」


喉元に刺さった剣が最期の声さえも漏らすことを許さない。


「我が前で醜き叫び声は不要」


突き刺さった剣が引き抜かれると同時に黒い霧が噴き出し、その姿が風の中に立ち消える。

青年はジリジリと一歩、また一歩。

後ずさる闇の住人ににじり寄るや、剣先を鋭くなぎ払った。

声を上げる暇(いとま)さえ与えず、痛みを覚える瞬きほどさえの時も与えず、青年は瞬時にそれらの命を奪って行った。


「我が前でその存在は無用」


噴き出す漆黒の霧は風に吹かれ、夜の深い闇の中へと消えていく。

赤い刀身の剣に穢れを拭きとるかのように左手を這わせていくと、剣は元々の銀の色を取り戻していく。


完全に銀色に戻った剣を片手に。
闇の中に佇む青年の背に。


蒼く丸い月が寄り添うように立っていた。