青年はその和音を聞くと。


にやり。


赤い唇に笑みを乗せた。

指を立て、一心不乱に貪りついているそれらを数え始める。


「一つ。二つ。三つ……五つか」


皮のグローブがギュッと乾いた音を立てる。

その音に、暗闇で蠢いていたモノ達が顔を上げた。


口の周りにも。
手のひらにも。
足元も。


すべからく赤い鮮血に塗れた闇のモノ達が、見上げた先にある顔を見てゴクリと息を飲んだ。

逃げ出そうとする輩たちを見据え、青年はほほ笑みを浮かべて見せた。


「さぁ、踊ろうか、諸君」


銀色の剣を右手に構え、左手でその刀身に刻まれた文字をなぞる。

青年が這わせた手に沿って、文字が赤く浮かび上がるように刀身を染め上げていく。