吸血鬼は蒼い月夜に踊る

「そうか……それは残念だ」


ゾクリと男の全身に寒気が走った。

ディーノを包む空気が冷たさを加速し、身も心も凍り付いたけれど遅かった。


「去れ……」


甘い囁きと同時に男の意識はぷっつりと闇に閉ざされた。

レディの銀色に輝く刀身がぐっつりと男の頭を貫き、躊躇することなくディーノはその剣先をグリッと半回転させた。

刹那、弾けるように男の身は黒い霧と化し、残ったのは静寂とさめざめとした凍てつく風の囁きだけだった。


「まいったね、月(マザー)」


ヒョイッと肩に銀色の剣を担ぐと、空に浮かぶ大きな蒼い月を見上げディーノは苦笑した。


「服が汚れてしまったよ」


ゆっくりと歩きだす美貌の青年の汚れのない背を優しく押し撫でるように、ただ蒼い月はそこに浮かび、彼の行く道を照らしだしていたのだった。