ゆっくりと立ち上がり、闇に目を凝らす。


一つだけ浮かび上がる影がある。


すうぅっと闇夜に浮かぶシルエットは細身の、身長のある男のものだった。

ひょんろりと縦長に伸びた影を見据えながら、ディーノはクツクツと喉を鳴らした。


「今宵はおまえが我と踊ってくれるというわけか……」


ディーノの投げかけた言葉に、その影が闇の中からゆっくりと姿を現した。

黒服に身を包んだ長身の初老の男の背中からはディーノの腕に絡みついた蔦が生えていた。

それはにやにやと卑しく歪んだ唇をぺろりと舐める。

人の持つ色とは異なった青黒い舌はぬめぬめとした唾液に濡れており、白目である部分は真っ赤な血色に染まり、小さな黒目だけがキョロキョロとせわしなく動いていた。

上下に動くはずの瞼は左右に動きは爬虫類を髣髴させた。


その姿を見てディーノは軽いため息を零した。