目深にかぶっていたはずのフードがその衝動ではずれ、絹糸のように細くゆるく波立った金色の長い髪がふわりと宙に舞った。

松明は手を離れ、数歩先に転がり落ちていた。

そのぼんやりとした明かりに黄金色に髪は輝いていた。

その下にのぞく白磁の肌はずいぶんと赤みを帯びており、その細い顎のラインに沿うように汗の滴が静かに流れ落ちていた。

ふと足元に視線を向ければ、ブーツのつま先が陥没している道に引っかかっていた。

膝からはじんわりと血が滲み、ジンジンとした痛みまで訴えてきている。

ヒタヒタヒタヒタ……迫る足音に真っ赤な唇をキュッと噛みしめ、少女は立ち上がろうと試みた。

しかし……膝ではなく、足首が悲鳴を上げる。

倒れた拍子に足首をひねってしまったらしく、その場から立ち上がることが出来なかった。

なおも近づいてくる足音に、少女はずりずりと引きずるようにその場を移動し始めた。


もうすぐなのだ。
もうすぐそこなのだ。
目的の場所まで、もうすぐそこなのだ!!


こんなところで自分は餌になるわけにはいかないのだと、少女は迫りくる恐怖に挫けそうになる心を叱咤した。

松明を再び手に取り、近くの壁にその背中を押し付ける。


だが、絶望的だった。