「そうまで言うのなら今宵はおまえも我に付き合え。一緒に円舞曲(ワルツ)を踊ろうじゃないか……」


ディーノの声にファルスはスッと身を離し


「王の言葉に従います」


と深々と頭を下げて見せた。


ディーノはにやりとほくそ笑むと、そっとファルスの顎から長い指先を離した。

それから暗く重いカーテンの向こうの光に溢れた太陽(ファーザー)の世界に視線だけを向ける。


蠢く死体たち。


人でもなく、まして同士などでもない。

高貴なる意思を失い、ただ本能のまま動き続ける輩たちは、人を喰らうことでしか生きられなくなった屍と化した暗き魂が生み続ける新しい命だった。


それを刈り取らなければ穏やかで静かな夜は戻らない。


高音の金きり声にも似た音が耳を打つ。

その声にディーノはため息を吐いた。


「太陽(ファーザー)も苛立っているらしい」


傍で控えるファルスは黙して頭を下げる。