「ディーノ様の御為ならば、この身切り刻まれること。私の至福の極みでございます」

「頼むから、これ以上レディを興奮させてくれるなよ」


困ったような口調をするディーノだったがその瞳は楽しげに揺れていた。

涼しげな瞳に妖しい色が折り重なって行く。

剣はそれ自体が意思を持つように、ガタガタと震えた。

そんな愛しい剣を落ちつかせるようにディーノはひと撫でした。


「みろ、ファルス。今宵も狩りに出なければいけなくなった」


微苦笑する主人に、ファルスは小さくほほ笑みかえしながら「申し訳ありません」と頭を垂れた。


『レディ=クライム』


それがディーノの相方の名だった。

闇を徘徊し、人間の生き血を啜る闇の住人たちを排除するその力。

圧倒的な力と食欲に満ち溢れたこの相方が、ファルス=レピジェンドとともに今のディーノを支え続けている。


そして『混血鬼』。


吸血鬼ではない。
まして、人間でもない。

生きるためにありとあらゆる生物の血肉を啜り、夜を渡り歩く異質な存在。
昼にも夜にも属せない、中途半端な肉体と魂を引きずった存在。

この世界に在ってはならない異質な存在たちを、ディーノは排除し続けていた。


それは彼の使命だった。


彼が今生きる意義はまさにこの世界の均衡を保つためにあるからだった。