「出ねぇかではなくて、出れねぇでおす……」
そういった瞬間、後ろから野太い声が聞こえてきた
「天神か!!天神ではないか」
その声を聞いて、ぱっと明るくなる天神さん
「芹沢さんではありんせんか!!……お久しゅうぶりでおすえ………最近お店に来てくださらなかったから、寂しかったんでおすよ?」
私が振り返ると、がたいの大きい、多分芹沢という男が、豪快に笑った
「がははははっ!!それはすまんのぉ……」
そして、芹沢という男が私を下から上まで見た
「この娘は新入りかのぅ?」
「ち、違います!私は、自由のために逃げているのです!!」
しまった……──思わず否定してしまった
こんな事言ったら怪しまれるに決まってる
私が覚悟して芹沢という男を見つめると……
「がははははっ!!お主は面白い娘じゃ!!……聞くが、お主は、何から逃げているのじゃ?」
この人なら大丈夫……
これは、私の勝手な思いだけど、やっぱり……
この人なら大丈夫
「幕府……いや、私を縛りつけるすべてからです」
心からそう感じた
すると、芹沢は不適に笑った
「なら、儂が、その縛りつけるすべてからお主を逃げ切らせてみせよう」
そういって
「きゃっ!!…な、なにをするのですか!!」
私を樽のように担いだ
「芹沢さん?無理はいけんせんよ」
天神さんの鋭い言葉に、また豪快に笑った
「大丈夫じゃ!!儂は約束を守る男じゃ」
すると、天神さんはふかい溜め息をついたあと、優しくいった
「それならええでおすけんど……風珱さん?おきおつけてくんなんしね?」
私が言葉を発しようとしたしゅんかん
グラッ
と視界が揺れた
芹沢がはしりだしたのだ
それも、全力で……
「また近々店にきてくんなんしね!!」
天神さんの声が遠くなるのがわかる
「どこに行くのですか!離しなさい!」
私の抵抗をいとも簡単に無視して、芹沢は走り続けた


