「姫様、準備ができました」
「わかりました」
私はそっと籠の外にでた
すると、運良く家来達は江戸の方を向いていた
今しかない
私は一目散にはしりだした
家来は此方を向く気配はない
私は、兄上が乗っていた馬に股がり、始めはきずかれぬように静かにゆっくり走らせた
幸い皆熟睡しており起きる気配はない
家来達も、まだ反対を向いている
私はきずかれないくらいまで離れたら、馬を走らせた
今日のように、ゆっくり歩きながら行くのでは、京までは、三日くらいかかるが、馬をこれでもかというくらい走らせたなら、一日足らずで京につく
これくらいのさがあるのだから、追い付くのは困難だろう
私は、どこに向かうでもなく、
ただ、
真っ直ぐに走った
(出来るだけ遠くに……────)
私は、必死で走って
走って
走って
走って………─────
よが明けても走って
そして、もう日の光なおちかけたころ
………───町を見つけた


