トシさんは、チラッとこっちを見ると、また書き物を始めた
「斉藤の部屋なら、俺の部屋の右に三つ隣の部屋だ」
私が言わずとも、トシさんはスラスラ説明してくれた
「ありがとうございます」
私が一礼して部屋を出ようとすると
「その簪、どおした?」
と、トシさんに不意に声をかけられた
「錦さんとお買い物にいったときに、お店の人からもらったんです」
「錦?」
トシさんはそう呟いて、こちらに目を向けた
「錦さんがどうかしましたか?」
すると、トシさんはバツが悪そうな顔をした
「いや、なんでもねぇ」
そして、またそっぽを向いてしまった
どおしたのかしら…
「では、失礼します」
私が部屋を出ようとしたとき
「風珱、簪……良く似合ってんじゃねぇか」
と、
「…っ……ありがとうございます……//」
いきなり言うから
ドキッと、胸が高鳴った
「し、失礼します」
真っ赤な顔を隠して、私は急いで斉藤さんの部屋に向かった


