不覚にも、ときめいてしまった。
顔のせいか、名前のせいか分からないけれど…。
それからはスムーズにあいさつが終わり、1限目を普通に迎えたのだった。
『晴…』
窓の外、寒そうに揺れる木々をぼんやり見ながら、ある人を思い出した。
あの日も、こんな風に冬の冷たい風が吹き抜ける日だった。
私は、緑の葉をたくさんつけて光を浴びてぽかぽかしていたはずだった。
だが、今はこの木とおんなじ。
何も暖まるものなど、ない。
なんとも虚しい…、私はこの木のようだった。
先生の声が静かな教室に、まるで子守歌のように響く。
時折聞こえる椅子が動く音。
黒板にあたるチョークの音。
すべてに、どこか切なくなり、癒されてもいたんだ。
『晴、…』
あれから一年経つのに…私はあの頃と、何も変われてはいなかった。
むしろ
弱くなったんだ、きっと……。

