ふと、頭をかすめた遠い記憶の…背中が…、余計にそうさせたのかもしれない。
舞の話も、まともに聞くことはなくただ空を見ていた。
「ねえ聞いたー??実習生の人の話!」
教室に入ると、みんなその話で持ちきりだった。
「知ってる知ってる!!名前がねっ相葉優哉って言うんだって!!」
――ドクッ…
クラスの子の話に、私は心臓を突かれたようになる。
相葉優哉なんて人、全く知らない人だった。
だけれど……
―ゆうや―
その名前に、ひどく反応してしまう。
思い出したくもない影がちらつく。
苦しくて、苦しくて、どうにもならない。
「晴…?」
様子がおかしい私を見て舞が顔を覗き込む。
「え、あ…大丈夫…」
どうしてこうも私は…あの頃のまま動けずに居るのだろう。
苦しくて仕方がなかったあの頃を、いつまでも胸に抱えて…私は今も居るのだ。
「……大丈夫だよ?」
舞が、私の制服をそっとつまむ。
舞にも、聞こえて…いたのだろうか。そして、私の変化が、分かってしまったのだろうか。
舞が鋭いだけかもしれないけれど。
「…ん。」
小さく返事をして、笑ってみせた。

