「吉永さん」
「えっ?」

私の顔を覗き込んだ相葉先生は不思議そうな顔で、私を見ていた。


「あ、ごめんなさいっ」

すっかり自分の世界に入っていた私は、相葉先生の存在を忘れてしまっていたようだ。


「コレ、あげるよ」

そう言って差し出されたのは、小さな紙。

「なん、ですか…?」

紙を受け取ると、そこには地図が書かれていた。
「今夜8時ぐらいに、そこにおいで。」
「…え…?」


それだけ言った相葉先生は、私の頭をぽんぽんと軽く叩くと、音楽室を出て行った。


なんだったんだろう。
今の時間は。

まだ、全然知らない人の前で泣いてしまった。

恥ずかしい……。

けど、……何故だろう。
心が、軽い。

世界が、少しだけ明るい。


私は、もらった紙を両手で包むと音楽室を後にした。








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