「くっ………うっ…」
涙から後から後から伝って、嗚咽が漏れる。
すると、不意に扉が開かれる。
ピアノの音も止んでいた。
「泣いてるの…?」
「え、…あっ…」
いきなり私の前に現れた彼は、全てを見透かすような目で私を見ていた。
「うっ、えと…っひくっ」
涙は止まったものの、しゃくりあげてしまってうまく話せない。
「おいで」
低く、透き通る声が私の耳に届いた時には、私は彼の腕の中で扉が閉められていた。
ふわっと香るのは、相葉先生の香り。
私を包むのは、相葉先生の…腕。
状況がうまく掴めず、私はただ黙って抱きしめられていた。
でも………、落ち着いてしまうのは何故だろう……。
「歌って」
スッと私から離れ、ピアノの前に座る彼は、全く何を考えているか分からない。
「う、歌う…??」
「ん、さっきの弾くから」

