階段を下りたところで、私は立ち止まる。
窓から向かいの校舎が見える。そこに人影が見えたので目を凝らした。
「んー、………。相葉先生……?」
向かいの校舎は特別教室ばかりなので、放課後ともなると生徒は入らない。
相葉先生は音楽室に消えていった。
なんだか気になって、知らない間に、向かいの校舎へと足を進めていた。
――どうして、向かってしまったのかなんて…、自分でも分からなかった。
「はあ、はあ、きっつ…」
階段を一気に降りて、走って来たのですっかり息が上がってしまった。
「遠いよ…本当に…」
廊下の突き当たりにある音楽室を目指して歩き出す。
すると
……♪〜♪♪〜♪
「ん………?」
歩くのを止め耳を澄ます。
♪♪〜♪〜♪
ピアノの音、だ……。
軽やかで、しなやかな、ピアノの音。
私は早足で、音楽室に向かった。

