それから普通に時は過ぎ、放課後を迎えたクラスは賑わっていた。
「舞っ今日さあルネ寄ろうよ!!」
ルネ、とは私たちがよく行く喫茶店だった。
「あー…、ごめん!!今日はたっくんと…」
申しわけなさそうに顔の前で手を合わせる。
「舞ー!!!」
ちょうどいいタイミングで、扉のところにたっくんこと、飯田琢弥(いいだ たくや)が立っていた。
彼は舞の彼氏で、一年の初めから付き合っている。
舞は、たっくんと呼び私は琢くんと呼んでいる。
「そんじゃしょうがないね!」
私が笑顔でそういうと、本当にごめんっまた行こ、と言って琢くんのところへ走って行った。
「晴ー!!ごめんな!!」
ニヒっと扉の向こうで笑う琢くんにベーっとしておいた。
(帰るか……)
だいぶ人が減ったクラスを見渡すとなんだか苦しくなった。
『晴、帰ろ』
懐かしい面影がまた私の脳裏をかすめ、振り切るように私は鞄を手に持ち教室を出た。

