「蜂須賀(ﾊﾁｽｶ)さんに用があってさ。いないみたいだったから、中で待たせて貰った」


言って石原は、まるで少年のように無邪気に微笑んで見せ、そして続けた。


「で、あんたは？」


「蜂須賀さんの忘れ物を取りに……。それよりお前、どうやって入った？」


訝しげに眉をひそめて男は問う。



「侵入は俺の特技だ。システムに限らずね」


悪びれることなく言う石原に、男の士気が僅かだが下がった。



石原はハッカーとしてこの組織に雇われた。ここの情報を入手しようと侵入してくる輩に、逆に攻撃を仕掛ける目的で。


もちろん、この部屋への入室を許されるのは、依頼があった時のみだ。勝手に侵入したことがバレれば、間違いなく消される。