「……それでね、隣のブタネコったら、うちの庭に無断で入り込んで来て、大きなウンコしていくのよ。草むしりしてる時に、あやうく触るとこだったわ。ほーんと、迷惑してるんだから」


目の前の中年女性が、そのふくよかな身体を興奮気味に揺らしながら、必死に訴える。



今日の仕事は、お暇な専業主婦の話し相手だ。


あの事件後俺は、業務怠慢という理由で、組織犯罪対策課から地域相談センターへ異動になった。



事件解決に奮闘して死にかけたってのに、この仕打ち。

まぁ実際、死にかけたのは事件解決後なんだけどね。



「それだけじゃないのよ。そのブタネコの厚かましいことと言ったら……。なんとね、うちのジェニーちゃんのご飯まで横取りするんだから」


そんなんだから、あんなにもみっともなくブクブク太れるのよ、と。自分のことはすっかり棚に上げて、彼女は大きな溜息を吐いた。



「ジェニーちゃんて?」


「うちの可愛いワンちゃんよ。そこにもちゃーんと書いてあるでしょ?」


入室と同時に渡されたA4用紙を指差して、彼女は何故だか得意げに答えた。