ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

――――が、


「許せ、ムツ……」

ボソリ、坂下が呟いた。


えっ?


反射的にガラス瓶から坂下へと目線を移せば、坂下は斜め上方へ銃を向けていた。



次の瞬間、銃声と共にガラスが砕け散る音が辺りの空気を震わせた。

パラパラと、粉々になったガラスの破片が、俺の目の前に舞い落ちる。



マジかよ?



「息を止めろ、佐村」

咄嗟に叫んで、窓際へ全力で移動する。


目に留まったパイプ椅子を両手で持ち上げ、窓ガラスに思いっきり叩きつけた。


大きな音を立てるも、窓にはヒビが入っただけだ。

けどそこを、折った右ひじで何度も突いてやれば、ようやくガラスが砕け、大人一人ぐらい通れそうな穴がポッカリ開いた。



「佐村、来いっ!」

佐村を振り返って叫んだ。


佐村は俺の指示通り、右手で自分の鼻と口を覆っていた。本当に息を止めてるかどうかは、見ただけでは判断できないけど。



慌ててこちらに駆け寄る佐村。ふと、坂下の様子を窺えば、その場に力なく立ち尽くし、ぼんやりと天を仰いでいた。


バカヤロウが。後悔した時にはあの世かもしんねぇのに……。

って、俺もか。



今はそんなこと考えてる場合じゃない。取り敢えず佐村を先に逃がそうと、再び窓に視線を戻せば、どうしてだか窓の外に人影が。