ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「なな」


自分可愛さに、そんな純粋な睦月くんを裏切っていいのか?



「ろく」


よくねぇよ。いいわけねぇだろ? 何考えてんだ、俺。



「ごー」


坂下も、俺たちを殺さねぇって約束、睦月くんとしたんだ。



「よん」


俺がこのまま残れば――

――もしかしたらウィルス拡散を阻止できんじゃね?



「さん……」



死に対する恐怖で俺の心は何度も揺れたけど……。

それでも最後まで、俺はその場から一歩も動かなかった。



坂下は『ぜろ』まで数え終えても、酷く落ち着いていた。

俺が逃げようが逃げまいが、坂下にとって、どうやら本当にどうでもいいことだったみたいだ。


薄っすらと期待した俺がバカだった。



「ゲーム、オーバー」

坂下はゆっくりと、やけにもったいつけて言う。



そして――


持っていたガラス瓶をその場に落とすかと思いきや、何故だか下投げで俺に向かって放った。



放物線を描いて宙に舞うそれ。俺の目には、なんだかスローモーションのように映った。


余裕じゃん。やっぱ坂下は、睦月くんとの約束を破れなかった。



落下地点を予測し、そこへ移動して待ち構えた。