「まぁいいや」
笑いを噛み殺しながら坂下は続けた。
「てか俺、殺さねぇよ?」
「えっ?」
期待に胸を膨らませながら顔を上げれば、坂下は穏やかに微笑んでいる。
「ならさっさとその、ポケットん中に入ってる物騒なもんを、こっちに寄越せよ」
俺がそう言うと、坂下はジャケットのサイドポケットに再び左手を突っ込んだ。
そこから抜き出した何かを俺に見えるようにかざし、
「これのことか?」
と、何でもないことのように涼しげに聞き返す。
坂下が手にしているのは、試験管みたいな形の小さなガラス容器。その口は蓋でしっかり閉じてある。
いかにも、『ウィルス入ってます』的なそれ。
「そうそう、それそれ。早くこっちに寄越しなさい」
坂下との距離は10メートルほど。かなり離れてはいるけど、言いながら右手を差し出してみた。
「どうして?」
「だってもうそれ、必要ないだろ?」
「お前ってほんっと思い込み激しいよな? 自分の価値観だけで物事見んのはやめろ。それでよく刑事が務まんな?」
痛いとこ突かれて、心が折れそうになる。
だがしかし、そんなのお構いなしに坂下は続けた。
「殺さねぇよ? 俺はな? コイツを生かすか殺すか……それを決めるのは俺じゃない、神だ」
視線を上げて遠い目をした坂下は、恍惚とした表情を見せた。
コイツの頭ん中、イっちゃってんな。
笑いを噛み殺しながら坂下は続けた。
「てか俺、殺さねぇよ?」
「えっ?」
期待に胸を膨らませながら顔を上げれば、坂下は穏やかに微笑んでいる。
「ならさっさとその、ポケットん中に入ってる物騒なもんを、こっちに寄越せよ」
俺がそう言うと、坂下はジャケットのサイドポケットに再び左手を突っ込んだ。
そこから抜き出した何かを俺に見えるようにかざし、
「これのことか?」
と、何でもないことのように涼しげに聞き返す。
坂下が手にしているのは、試験管みたいな形の小さなガラス容器。その口は蓋でしっかり閉じてある。
いかにも、『ウィルス入ってます』的なそれ。
「そうそう、それそれ。早くこっちに寄越しなさい」
坂下との距離は10メートルほど。かなり離れてはいるけど、言いながら右手を差し出してみた。
「どうして?」
「だってもうそれ、必要ないだろ?」
「お前ってほんっと思い込み激しいよな? 自分の価値観だけで物事見んのはやめろ。それでよく刑事が務まんな?」
痛いとこ突かれて、心が折れそうになる。
だがしかし、そんなのお構いなしに坂下は続けた。
「殺さねぇよ? 俺はな? コイツを生かすか殺すか……それを決めるのは俺じゃない、神だ」
視線を上げて遠い目をした坂下は、恍惚とした表情を見せた。
コイツの頭ん中、イっちゃってんな。



