ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

坂下、佐村、そして俺。リハ室に三人だけが残った。

とりあえず、関係のない市民を巻き込むという最悪の事態は免れた――と思う。



けどホッと一息つく暇もなく、坂下が口を開く。


「最後はお前だ、有坂皆人。さっさと出てけ。外で事情聴取でも何でも、好きなことやってろ」


「いいや、俺の用はまだ済んでない」

言いながら、坂下に向かって、人差し指を真っ直ぐ突きだした。



「坂下亮人、お前を殺人未遂の現行犯で逮捕する」


「未遂じゃねぇよ?」

坂下はシレッとそんなことを言って、屈託なく笑った。



「いいや、お前の計画は未遂に終わる。睦月くんと約束したしね。男だったら一度した約束は何があっても守らねぇと。だろ?」


「お前、なんか勘違いしてねぇか? ムツ(睦月)と何約束したかしんねぇけど、あいつは俺に寝返ったんだ。言ってみりゃ裏切りものだろ?」


「なぁーに言っちゃってんだよ。寝返ったように見せかけて、実はそれもこっちの作戦だよ。まさかこんなにも易々と騙されてくれるなんてな。ありがとね?」


「へぇ……お前って、嘘吐く時、右の眉が上がるんだな?」


「何だとぉ? 嘘なんかじゃねぇしっ!」


ハッタリだと見透かされ、焦って言い返すもドツボ。無意識に視線を落として、小さく舌を鳴らした。



そんな俺を嘲笑う坂下の声が、リハ室の中、嫌味なぐらいに響き渡る。