ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

坂下の意図がさっぱり読めないけど、従うしかねぇよな。俺は丸腰で、アイツは銃を手にしている。おまけに殺人ウィルスも所持してるのは間違いない。



「わかった。だったら、さっさと指示出せよ」

渋々同意すれば、

「まずは、ガキ――とその親」

先ほど人の流れから押し出され、部屋の端っこへ追いやられた親子を、坂下は目で指した。


親子が出口へと移動するのを、恨めしげに見つめる他の患者たち。



「次、ジジイとババア」

今度はお年寄りだ。


ひょっとして坂下……免疫力の低い層から順に逃がしている?

まさかね。



爺さん婆さんが、そろりそろりと動き出す。それに混じって、どう見ても60歳に届くか届かないかのオッサンが、そそくさと移動を始めた。


すかさず坂下が冷ややかに言葉を発した。

「ああ、そっ。お前、そんなに死にてぇの?」


察しがいいそのオッサンは、自分のことだとすぐに気付く。出口方向を向いたまま、ヒタと立ち止まった。そして、おずおずと坂下を振り返る。


巧い言い訳が思いつかないらしく、パクパクと口を微かに開閉させるも、そこから声が出ることはなかった。



「順番は守ろうね? おっさん」

言って坂下は、ニッと両口角を上げて笑って見せるも、目は笑ってない。感情も何もないその目は、一体何を見て、何を思っているのか……。さっぱり見当もつかない。


が、突然に佐村が動く。


一目散に走りだした。その行く手を阻む者を、次々と力任せに突き飛ばしながら、出入口へと猪突猛進。