ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「続けろ、有坂皆人」

ヤツは妖艶な微笑を浮かべて、穏やかに言う。


不覚にも、坂下のことを綺麗だと思ってしまう。何だか無性に面白くない。



「おいっ、有坂?」

ぼんやりしていた俺は、その声にハッと我に返る。


「あっ、ああ。じゃあ続けます。建物の外へ出たら、そのまま待機してください。もうそろそろ応援が来る頃です。事情聴取や負傷者がいないかの確認、その他もろもろがあるんで、決して勝手に帰ったりしないように」


患者の何人かは、俺の言葉に頷いた。

それで充分だ。『返事は? わかたのか、わからねぇのか?』とか……。学校の先生みたいなことを言うのは止めておく。



「では、さっきも言ったように、出口付近の方から順に……」


「誰から逃がすか、その順番は俺が決める」

坂下が俺の言葉を遮って口を挟む。



「そんな非効率的なやり方で、あんたは全員が避難し終えるまで待てんのか?」


「待つって言ったろ?」


「気が変わらないって保障はどこにもない」


「そんなもん、お前が俺を信用する、しないの問題じゃねぇの?」


平然として言い、坂下はニッと笑った。