「いいよな? 避難させても」
「いいとも」
昼お馴染みのバラエティー番組の決まり文句で、明るく元気に答えた坂下は、子どもみたいに無邪気に笑って見せた。
不気味だ。坂下は正気じゃない。
三人もの人間を(それ以上かもしれないけど)躊躇なく殺したんだ、正気の沙汰じゃないのはわかり切ってるけど、それでも改めて恐怖を感じた。
「出口付近の方からゆっくり進んで、順番に部屋から出てください」
言うなり、たちまち我先にと出口へ向かう患者たち。まだ歩き始めたばかりだろう幼い子どもとその母親が、人の流れに弾かれた。
「ちょっ、人の話は最後まで……」
ムカついて口を開いたけど、言い終える前に銃声が轟いた。
再び全員が凍りついたように動きを止める。
恐る恐る銃声のした方向へ視線をやれば、右腕を一直線に頭上へ伸ばした坂下。
その腕の先、天井を見上げれば、ポッカリ風穴が開いている。
坂下め、本当に撃ちやがった。信じらんねぇ……。
「おめぇら、見苦しいな。反吐がでるわ。『蜘蛛の糸』って話、知らねぇのか? 他(ほか)を蹴落としてでも自分だけは助かろうってヤツは、どうなったっけなぁ?」
言って坂下は、可笑しそうに笑い声を漏らした。
そして、坂下の目線がスッとスライドし、俺を真っ直ぐ射抜く。
思わず生唾を呑んだ。もうこれ、正に『蛇に睨まれた蛙』。
「いいとも」
昼お馴染みのバラエティー番組の決まり文句で、明るく元気に答えた坂下は、子どもみたいに無邪気に笑って見せた。
不気味だ。坂下は正気じゃない。
三人もの人間を(それ以上かもしれないけど)躊躇なく殺したんだ、正気の沙汰じゃないのはわかり切ってるけど、それでも改めて恐怖を感じた。
「出口付近の方からゆっくり進んで、順番に部屋から出てください」
言うなり、たちまち我先にと出口へ向かう患者たち。まだ歩き始めたばかりだろう幼い子どもとその母親が、人の流れに弾かれた。
「ちょっ、人の話は最後まで……」
ムカついて口を開いたけど、言い終える前に銃声が轟いた。
再び全員が凍りついたように動きを止める。
恐る恐る銃声のした方向へ視線をやれば、右腕を一直線に頭上へ伸ばした坂下。
その腕の先、天井を見上げれば、ポッカリ風穴が開いている。
坂下め、本当に撃ちやがった。信じらんねぇ……。
「おめぇら、見苦しいな。反吐がでるわ。『蜘蛛の糸』って話、知らねぇのか? 他(ほか)を蹴落としてでも自分だけは助かろうってヤツは、どうなったっけなぁ?」
言って坂下は、可笑しそうに笑い声を漏らした。
そして、坂下の目線がスッとスライドし、俺を真っ直ぐ射抜く。
思わず生唾を呑んだ。もうこれ、正に『蛇に睨まれた蛙』。



