ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「建物の中は非常に危険だからです。まだ悪いヤツがこの中に隠れてるかもしれないでしょ?」

こめかみが不随意にヒクヒクと痙攣しているが、極力平静を保ち、大嘘ついて言い聞かせようと試みる。



「だったら、間宮先生も危険じゃん」


「そうだよ! 間宮先生、行かないで!」


おいおい大人気だなー、間宮くん。



「間宮先生一人なら、刑事さんが守れるから大丈夫」

内心はムカムカきてたけど、それでも俺は笑ったさ。


もうほんっと、ガキは苦手。



「信用できなーい!」


「オジサンなんかに守れるのー?」


『信用できない』より『オジサン』という代名詞に腹が立った。まぁでも今は、そんな小っちゃなことに怒っている場合ではない。だからスルー。



「大丈夫よ。刑事さんは戦いの訓練も受けてるの。ケンカのプロよ」


後ろの方から声がして、ガキ共全員、一斉に振り返った。



年は30代半ばってとこかな。ストレートの黒髪を後ろで一つにまとめた、これといった特徴もない地味な女性がそこに居た。


存在が薄すぎて、全く気付かなかった。



「森本先生、子どもたちをお願いします」

間宮くんはそう言って、彼女に向かって軽く頭を下げた。