ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

けどホッとしてもいられない。この凄惨な光景を子どもたちの目に触れさせるようなことは、できれば避けたい。



俺にしては珍しく、俊敏に行動した。


即刻、来た廊下を玄関口へと走って戻り、施設内から飛び出した。



最前列を歩いていた子どもたちが、俺に気付いて立ち止まった。後ろに続いていた子もそれに倣って立ち止まったり、余所見していたヤツは、前列の子にぶつかったり。


最終的には全員が動きを止め、そしてみんなの視線が一斉に俺へと集まる。



揃いも揃って呆けた顔で、物も言わずにポカンと俺を眺めている。


が、そんな子どもたちを掻き分けるようにして、一人の男が後方から進み出て来た。

ひょろりと背の高い、黒縁メガネを掛けた若い男だ。首にぶら下げたネームホルダーには『間宮』の文字。



「あなた誰ですか? 中で何を?」

猜疑心剥き出しの眉根をキュッと寄せた顔で男は問う。



手っ取り早くジャケットの胸ポケットから身分証を出して、それを間宮くんに示した。


「警視庁、組織犯罪対策課の有坂です」

ゆっくり丁寧に名乗れば、間宮くんは動揺したのか、ほんの一瞬目を泳がせた。


「刑事さん? どうして?」

不安げな面持ちで、間宮くんは弱々しく尋ねる。



一から十まで説明するのなんか面倒だし、時間に余裕もない。


「ここの職員ですよね? 悪いけど――

――仏さんの身元、確認してくれる?」

単刀直入に依頼してみた。