ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「兄貴」

声を掛けると、ゆるり、恨めしげな視線をこちらに寄越す。



「これでお相子だ」

わざと意地悪なことを言って笑ってやった。



兄貴は俺の心配なんかしてないで、自分の身を守ることを最優先で考えるべきだ。

だって来月、兄貴はパパになるんだし。





署の公用車を走らせて10分もしないうちに、ジーンズバックポケットの携帯が振動を始めた。



運転中の携帯電話使用は違法だが、車を路肩に停車している暇なんかない。

相手も確認せず、電話に出た。



「有坂くん?」

弱々しく囁いた電話越しの声。聞き覚えのあるそれは、今正に渦中の人、睦月くん。



「睦月くん? 今どこだよ? みんなすっげぇ心配してんだぞ。早く戻れって」

白々しくそう言ってみたけど、正直、こんなんで睦月くんが大人しく署に戻るなんて、いくら楽天主義者の俺でも到底思えなかった。