ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

すぐさま駆け寄ってチワワくんの顔を覗き込み、

「おい、クソ犬。何があった?」

呼びかけると、チワワくんは薄く目を開け、「皆ちゃん」と、苦痛で歪んだ顔に引きつった笑みを浮かべた。



チワワくんの全身に視線をを走らせれば、腹部に刃物か何かでブッ刺されたような酷い傷。


応急的にあてがわれた布が、みるみるうちに鮮紅色に染まってゆく。



「何笑ってんだよ? 笑うなって、バカヤロー」


「龍くんが……」


不意に出た兄貴の名に、一瞬怯んだ。



「兄貴が?」

そう聞き返して、ふと谷口さんを振り返れば、驚く様子もなくただ深刻な面持ちでチワワくんを見下ろしている。



どういうことだよ?



「皆ちゃん、ゴメッ……、気をつけ……て」


チワワくんは、荒い息使いの中、細い声を絞り出した。