ロシアンルーレットⅢ【ｱｸｼｮﾝｺﾒﾃﾞｨｰ】

少女の身体がまるで人形のように、仰向けの状態で床の上に落ちた。

それを見届け蜂須賀は、身を翻して二階通路を走り出した。エレベータから数えて三つ目の扉を開け、瞬く間にその中へと消えた。



兄貴は動かない左足を引きずりながら、右腕と右足を駆使して横這いに移動する。


そうしてすぐに、少女の傍らに辿り着くと、半身を少女の上に乗り出した。



だらだらと真紅の液体を垂れ流す少女の首筋を、左手で包むように圧迫し、反対の右手は少女の手首に添え、脈をとる。



「しっかりしろ。おい、聞こえるか？　俺を見ろ」


１００パー日本語なんかわかんねぇのに、兄貴は少女の顔の真上から必死に呼び掛ける。



少女が薄く目を開いた。視点の定まらない眼差しは、兄貴ではなくどこか遠くを見ている。



顔を微かにしかめた少女。途切れ途切れに繰り返される弱々しい呼吸は次第に回数を減らし……。

けれど、意識を手放そうとすれば、兄貴がその小さな顎を掴んで、

「しっかりしろ、俺を見るんだ」

と引き戻す。