ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

兄貴も機動隊の奴らも、為すすべなくただ見守る中、蜂須賀だけが余裕の笑みを浮かべて、ゆっくりと後方へ移動する。けどその動線の先は、研究室へと繋がる通路とは微妙にずれている。


蜂須賀は前方を向いたまま後退しているから、進行方向は見えていない。行き先が目的の方向から逸れても当然と言えば当然だけど……。



どうも腑に落ちない。



「日置、他に出口は?」

隣の谷口さんが小声で囁く。



蜂須賀は、通路じゃなくそのすぐ隣のエレベータの前で足を止めた。そうして後ろ手にその横の壁に埋め込まれた乗り場ボタンを押した。


エレベータは一階に待機していたらしく、扉はすぐに開いた。


兄貴と少女に向かって銃を構えたまま、蜂須賀はゆったりと落ち着いた足取りで更に後退し、エレベーターに乗り込んだ。



日置からの情報を得たらしい谷口さんが、

「させるか」

ボソリと呟き駆け出した。そうして、研究室へ繋がる通路へと消えた。