ロシアンルーレットⅢ【アクションコメディー】

「立てよ、新開。ああ、違うな、有坂龍一。お別れだ」

正体がバレていたと知っても顔色一つ変えず、兄貴は言われた通りに立ち上がる。


「女も立たせろ」

蜂須賀は顎で少女を差した。


兄貴は、伏せたままじっとしている少女の肘をそっと掴んで持ち上げる。ゆるゆるとそれに従って起き上がった少女は、恐怖に震えながら、隣の兄貴を濡れた瞳で見上げた。



少女も連れて行くつもりか。

けど研究所は消えた。他に血清を作る当てでもあるのか?



だが蜂須賀は、そのまま一歩一歩後退って、兄貴たちから離れて行く。未だ銃口は、しっかり少女を捕えたままだ。



蜂須賀の背後には、俺たちがさっき通って来た研究所へと繋がる通路。従業員専用の裏口から脱出するつもりか? けど当然、そこにも機動隊が配備されている。


ウィルスを手にしているからって、無敵にでもなったつもりかよ。